| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-239J (Poster presentation)
南九州の多くの森林に同所的に生息するアカネズミ(以下、アカ)とヒメネズミ(以下、ヒメ)は、秋から冬にかけて、マテバシイ堅果(以下、堅果)を重要な餌資源として利用し、それらを貯食する。彼らの貯食行動は堅果の二次散布に貢献することが知られ、貯食行動およびこれに著しい影響を及ぼす野ネズミの個体群動態を研究することは、マテバシイの天然更新や分布拡大のメカニズムを解明するために重要となる。アカの個体数は、堅果生産量に強く影響されているのに対し、ヒメの個体数変動は、堅果生産量との同調性が低い。本研究では、堅果生産量が野ネズミの個体数を変化させるメカニズムを明らかにするため、アカおよびヒメの体重変動に注目し、1997~2010年の堅果生産量、体重変動および個体数増加率の関係を解析し、堅果生産量がアカとヒメの個体数変動を生じさせるメカニズムを考察した。また、2種の種間関係が個体数変動パターンに与える影響を考察した。その結果、アカとヒメともに、成熟個体の体重のピークと繁殖兆候を示す個体の割合のピークの時期が一致した(9~11月)。また、アカは餌条件(個体あたりの堅果生産量)と体重、餌条件と個体数増加率、体重と個体数増加率、いずれにおいても有意な相関がみられ、堅果生産量が体重変化を通して、アカの繁殖成功を左右することが推察された。これに対して、ヒメは、餌条件と体重には有意な相関関係がみられたものの、体重と個体数増加率、餌条件と個体数増加率の間には有意な相関がみられなかった。アカとは異なるヒメの個体数変動パターンに、アカがヒメに対して一方的に優位であるという種間関係が関与している可能性が示唆された。