| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-240J (Poster presentation)
魚類の卵サイズは産卵時期により変異し、一般に水温が上昇する春から夏が産卵期の場合には徐々に小さくなることが知られている。これは、孵化仔魚の食物となる動物プランクトンの大きさおよび量に対する適応と考えられている。琵琶湖固有種のホンモロコは、春から初夏にかけて、琵琶湖沿岸、内湖、内湖流入河川等で産卵し、他の魚類と同様に産卵時の水温と卵サイズの間には負の相関が成立することが我々の研究から明らかとなった。しかし、ホンモロコの卵サイズが産卵時期によって変化する要因については検討されていない。そこで、本研究では、実験条件下と自然環境下で孵化仔魚サイズと卵サイズの関係について調べ、孵化仔魚サイズがその要因になっている可能性について検討した。
琵琶湖沿岸部(水温11℃~25℃)で定期的に採取した産着卵を、実験条件下で2通りの水温(一定水温および産卵現場の水温)で孵化させた。一定水温(22℃)では、卵サイズと孵化仔魚サイズには有意な正の相関がみられた。しかし、産卵現場の水温(11℃、17℃、22℃)で孵化させると、低水温ほど孵化までの時間が長期化するだけでなく、孵化仔魚サイズは小型化し、卵サイズと孵化仔魚サイズの相関が見られなくなった。一方で、伊庭内湖流入河川(水温14℃~16℃)で産卵し、流下してきたホンモロコ孵化仔魚を定期的に採取したところ、卵サイズと孵化仔魚サイズの間に正の相関がみられたが、これは湧水起源の伊庭内湖流入河川では水温がほぼ一定であるためと考えられた。以上のことからホンモロコは、春季の低水温期には孵化までの時間が長くなり、孵化仔魚サイズが小型化するので、これに対応するため、大型卵を産出するのではないかと考えられた。