| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-249J (Poster presentation)
多くの動物は優れた認知システムで採食に好適な場所を学習し、効率よく採食していると予想されるが、生涯のほとんどを洋上で生活する鳥類の行動圏や行動習性を知る機会は限られていた。日本で多く繁殖する外洋性海鳥オオミズナギドリ Calonectris leucomelas (体長約50cm、翼開長約120cm、体重約600g)の東日本太平洋側の繁殖集団は、子育て中に寒流と暖流が混合する海域と、寒流フロントの海域を、定期的かつ集中的に利用することが分かったが、海洋環境の異なる日本海側では多くが不明である。
演者らは、日本海の最大繁殖地、若狭湾の京都府冠島(北緯35度35分東経135度25分、国の天然記念物指定 推定生息数20万羽)で子育てする親鳥に小型衛星対応発信機を装着し、洋上行動を追跡した。
2009年8月後半から9月初旬にかけて、繁殖地の巣穴で放鳥し、洋上行動を追跡したオス親2羽は、島以西もしくは以北の海域に向かい、いずれも朝鮮半島東岸沖へロングトリップした。1羽は、約200km西の島根県隠岐諸島の海域へ往復の後、約500km離れた韓国慶尚北道北部沖へ向かい、もう1羽は日本海中西部の大和海盆周辺(鳥取県の北約300km)に滞在後、島から約700km離れた北朝鮮沖の陸棚斜面海域へロングトリップし滞在した。韓国沖の滞在海域はクロロフィル量が多く、北朝鮮沖と大和海盆ではクロロフィル量は低く、流速は早い海域にいずれも滞在した。本種の潜水はこれまで最も深くても水深約10m以浅のため、これらの海域には夏季、海面のごく浅い表層部に効率よく採食できる餌環境が形成されるとみられ、ロングトリップでこれらの海域の餌資源に依存しながら、島で子育てをすることが示唆された。