| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-253J (Poster presentation)
鳥類の渡りを調べるためには、従来より継続されている標識再捕や衛星追跡などが現在も盛んに行われている。また、近年では遺伝子マーカーを用いて繁殖地を推定する方法も適用されつつある。本研究では新たに羽毛内の元素組成から繁殖場所や換羽時の場所を特定する目的とした検討を行った。羽毛内に蓄積される微量元素は、その場所の成分特性を反映するため、幼鳥の羽毛はその土地のマーカーとして利用できる可能性があることが予想される。
≪方法≫
ほぼ同緯度に位置する、青森県つがる市、及び北津軽郡中泊町を流れる岩木川と、青森県三沢市北部に位置する仏沼の2地点を調査地とし、オオセッカLocustella pryeri、コヨシキリAcrocephalus bistrigiceps、コジュリンEmberiza yessoensis、アオジEmberiza spodocephala、4種の草原棲鳥類をかすみ網を用いて捕獲、羽毛採取した。その後ICP-MSを用いて微量元素分析し、統計的な検討を行った。
≪結果と考察≫
換羽時の生息地が明らかである幼鳥は、オオセッカ、コヨシキリ、コジュリン、アオジ、全てにおいて岩木川と仏沼で判別可能であった。換羽時の生息地が不明であるオオセッカとコヨシキリの成鳥についてはばらつきが見られるため、換羽時の生息地が異なるものが同じ繁殖地を利用していることが示唆された。しかし、成鳥も岩木川と仏沼でおおよそ判別できるため、繁殖地の異なるものは越冬地も異なっている可能性があることを同時に示唆する結果となった。