| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-182J (Poster presentation)
日本の半自然草地は人為的な管理を放棄すると森林へ遷移し、この遷移の進行によって下層の植物群落の種数や種構成は大きく変化することが知られている。種多様性のスケール(面積)に依存的な変化は環境変化や異なる環境下において異なることが報告されている。種多様性のスケールに依存的な変化は環境条件によって異なるという現象は、環境要因の空間的な不均一さに起因する可能性が指摘されている。しかし実証した研究は少ない。
本研究では、数十年前まで火入れによって維持されていたススキ草地において、遷移の進行に伴って種多様性(種数)のスケールに依存的な変化が異なるかどうかを調査する。もし異なるならば、そのメカニズムは環境要因の空間的な不均一さに由来するのか、また、異なる場合とそうでない場合の違いは環境要因の空間的な不均一さの違いで説明できるのかを明らかにすることを目的として研究を行った。
調査は富士山北西麓に位置する野尻草原(標高1260m)で行った。草原と森林が混在する70m×50mの調査区の中に0.5m×0.5mのコドラートを165カ所設置した。各コドラートにおいて植生調査を行うとともに、地表0.5m高での開空率、土壌硬度(山中式土壌硬度計)、リターの厚さを測定した。
調査から得られたデータを用いて多変量回帰木(Multivariate Regression Trees : MRT)を行った結果、165個のコドラートは開空率が高い群落(草原、n=77)、開空率が低くリターが浅い群落(林床、n=63)、開空率が低くリターが深い群落(ススキ群落、n=25)の3グループに分類された。
この結果から、遷移の進行に伴って種多様性のスケールに依存的な変化が異なる場合とそうでない場合を整理し、種多様性のスケールに依存的な変化が環境要因の空間的な不均一さと対応しているかを議論する。