| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-198J (Poster presentation)

群集の進化的遷移から取り残される「生きた化石」の出現・維持機構

*伊藤洋,Ulf Dieckmann(IIASA・進化生態部門)

古生物学的時間スケールにおいて、様々な分類群の出現、盛衰、絶滅が繰り返されることにより、生物群集は進化的に遷移してきたとされる。その遷移の時間スケールに比べて著しく長期間に渡り、形態的特徴を維持し続けている生物は、「生きた化石」と呼ばれることがある。本研究はそのような生物の出現・維持機構を調べるために、捕食被食相互作用や資源競争によって生物群集が共進化的に成長、維持される数理モデルのシミュレーション解析を行った。その結果、被食者(または資源)としての特性(または質)が、他の種からかけ離れた種と、それのみを捕食する種から成る半独立的な食物網モジュールが共進化的に出現する場合があることと、それらの個体数が著しく少ない場合には、進化速度が著しく遅い「生きた化石」と成り得ることが示された。ただし、その半独立的食物網モジュールにおける被食者も、捕食者(または消費者)として、そのモジュール外の他の種と餌を巡る競争関係にあるため、著しく遅い進化速度は大きな不利益をもたらす(餌をほとんど獲得できない)。半独立的モジュールにおける捕食者もまた、そのモジュール外の種に捕食される被食者として、同様の不利益を被る(強い捕食圧を受ける)。しかし、その食物網モジュールの半独立性が、それらの不利益を補償し、絶滅を抑制し得ることが示された。


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