| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-201J (Poster presentation)
近年、世界的な両生類の減少が警告されているが、日本在来のカエル類のほとんどは水田地域を主な生息環境としており、圃場整備や耕作放棄地の増加などの環境の変化が本種群の減少や絶滅を引き起こしていることが問題となっている。本研究では、立地環境が異なる水田地域におけるカエル類群集の構造を季節消長と共に地域スケールおよび畦畔や水田環境等の小スケールとの関係性から解析し、本群集に影響を与えている要因を把握し、保全対策を検討することを目的とした。
調査は長野県上伊那地方における中山間地と市街地において基盤整備の有無が異なる5つの水田地域を選定した。各調査地域は直径500mの円内とし、その中に約2kmの調査ルートを設け、2011年の5月~8月の夕方に計30回の現地踏査を行った。ルート上に出現したカエル類の種名と成長段階別の個体数を計測し、また地図上に位置を記録した。
調査期間の全地域におけるカエル類はニホンアマガエルおよびヤマアカガエル、ダルマガエル、トノサマガエル、シュレーゲルアオガエルの計5種で、総出現個体数は4434個体であった。またトノサマガエルとダルマガエルの中間個体も確認された。ニホンアマガエルは全地域において出現したが、ヤマアカガエルとシュレーゲルアオガエルは中山間地にのみ出現した。ダルマガエルは市街地にのみ出現し、さらに未整備地域に多く出現した。トノサマガエルは市街地・整備地域に主に出現し、一方では中山間地にも出現した。ニホンアマガエルやヤマアカガエルなどの移動性が高いと考えられる種は、荒地や水田に面していない地域での出現が多くみられたが、ダルマガエルやトノサマガエル等の水田に依存性が高い種は、逆に水田や畑に隣接する畦での出現が多かった。発表では、土地利用や管理状態だけでなく、季節消長や畦畔の環境との関係などについても成長段階をふまえ考察する。