| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-204J (Poster presentation)

奈良県内のため池を利用する鳥類の群集構造

*桑原 崇, 桜谷保之(近畿大・農)

ため池は水田の灌漑用水を確保する利水施設として人工的な水域であり、少雨で天然湖沼の少ない西日本の瀬戸内地域や近畿地方の中部などで多数造られ、貴重な止水環境となっている。また、ため池は、灌漑や池干しなどの人為的攪乱を受けながら長い年月をかけて抽水植物群落やヤナギなどの池畔林を形成させることにより、多様な生物が生息場所や採餌地として利用する環境になった。その中でも鳥類にとってため池とは、水鳥の生息場所や繁殖地である他に、ヨシ帯を利用する鳥の繁殖地やねぐら、羽毛の汚れや寄生虫などを落とすための水浴び場、様々な鳥の採餌地など水鳥だけでなく、山野の鳥にも重要な生息場所となっている。

今回は、ため池を人工的に造成されたものに限らず、自然起源であっても人為的な改変がなされている池と定義し、それぞれの池においてどのように鳥類の群集構造の違いがあるのかを調査した。

調査地は奈良県大和郡山市にある峠池上池・峠池下池、奈良市の近畿大学奈良キャンパスのA池・E池・F池、奈良市大和田町にある赤渕池・北請池・滝寺池・前台新池、平城宮跡周辺の水上池・コナベ池で行った。調査は2011年10月から月に2~4回、朝に実施し、調査方法は基本的に15分間の全体を見渡せる位置での定点調査と池の周回路のルートセンサスを行い、周回路より内側で確認された種とその個体数、行動、利用していた環境を記録した。

この結果、調査地の面積とそれぞれのため池を利用する鳥類の種数との間に正の相関があることがわかった。また、ため池ごとの種多様度指数H’ やため池間の重複度の解析を行い、ヨシ帯や池畔林、堤防の護岸状況といったため池周辺における環境要素が鳥類の群集構造にどのような影響を及ぼしているかについて検討する。


日本生態学会