| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-207J (Poster presentation)
日本列島において水田によって特徴づけられる農地景観は生物多様性を維持する重要な環境のひとつである。畦畔や森林の林縁などは多種の植物がシーズンを通して開花し、ハナバチ類の採餌場所となる。しかし、農地では管理に伴う人為的撹乱により、ハナバチ類の餌資源となる植物は種数、開花量ともに変異が大きい。本研究は、開花植物の種類と開花量が異なる場所で、各植物に訪花するハナバチ類の種組成と訪花数を比較することによってハナバチ類各種の訪花選好性を明らかにすることを目的とした。そこで、石川県の加賀地域と能登半島、新潟県の佐渡島に計6ヶ所の調査地を設定し、2011年の春~秋におよそ10日間隔でハナバチ類の定期採集を行った。
全調査地で調査期間を通して96種、5077個体のハナバチ類が採集され、優占種の上位3種はキバナヒメハナバチ、ニホンミツバチ、アカガネコハナバチであった。各調査地で34~62種、576~1162個体のハナバチ類が採集されたが、優占種は調査地間で異なり、上記の3種以外にトラマルハナバチ、アシブトムカシハナバチ、オオムカシハナバチ、ズマルコハナバチの優占度が高い調査地があった。これらのハナバチ類は調査地で開花した多種の植物のうちコウゾリナ、アキノノゲシ、ハルジオン、ヒメジョオン、ブタナ、シロツメクサ、ツリフネソウなど特定の植物に多く訪花する傾向があったが、ハナバチの種によっては多様な植物に訪花するものもあった。植物群集の資源量の変動がハナバチ類の訪花パターンに影響を与えた可能性があるが、ハナバチの種類によって特定の植物に比較的強い選好性を示すものと、訪花植物に対して広い選択幅を示すものがあることが示唆された。