| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-209J (Poster presentation)

アミノ酸窒素同位体比による陸域腐食食物網解析の試み

*長谷川尚志(京大・生態研),力石嘉人,小川奈々子,大河内直彦(JAMSTEC),陀安一郎(京大・生態研)

生元素の安定同位体比を指標とした食物網構造解析は、長期に渡る食性を反映するなどの利点から用いられてきた。近年ではより発展的な手法として、アミノ酸の窒素安定同位体比を指標とすると、より正確な栄養段階推定が可能であると主張され始めた。その有用性は水域から始まり陸域食物網でも試され、生産者が水域・C3植物・C4植物のいずれかのみである生食食物網では非常に有効であることが示されている。

一方、陸域では光合成産物の多くが腐食食物網に入るため、腐食食物網の重要性が大きい。

しかしアミノ酸窒素同位体手法は未だ陸域腐食食物網で試されていない。また、この手法では動物が合成できない「必須アミノ酸」を指標として利用するが、腐食食物網では生産者だけでなく微生物による必須アミノ酸の合成が考えられるため、生食食物網とは異なるパターンが示される可能性がある。

本研究では森林土壌食物網にアミノ酸同位体指標を適用し、リターの初期分解過程と腐食食者のエサの分解程度に伴う食性の違いに伴うアミノ酸窒素同位体比の推移から、分解過程におけるリターのアミノ酸窒素同位体比の推移を推測した。結果としてアミノ酸指標においてエサ資源の値を反映するとして重視されるフェニルアラニンが、分解初期において微生物の生合成により特異な値を示すことが示唆された。さらに捕食者も含めた土壌食物網の全体に栄養段階推定を試し、指標としての実用上の有用性を試した。その結果は微生物代謝や被食-捕食関係と概ね一致する結果であり、陸域腐食食物網においてもアミノ酸同位体指標が有効であることが示された。


日本生態学会