| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-213J (Poster presentation)
下等シロアリとよばれる6科のシロアリの後腸内には、シロアリの摂食したセルロースの消化に関与する原生生物や細菌が共生している。共生原生生物の組成はシロアリの種に特異的で、ヤマトシロアリでは現在8属15種の原生生物が確認されている。原生生物は脱皮時には失われ、その後巣仲間からの栄養交換時に回復することが分かっている。微生物の群集レベルの操作実験の材料として、境界が明確で操作が行いやすいシロアリの消化管内原生生物群集は好適な材料だと考えられる。
本研究では、温度条件が原生生物群集の組成や構造に与える影響を調べるため、温度を変えてシロアリを飼育する実験を行った。クヌギ粉末を敷いた容器にヤマトシロアリのワーカー200個体を入れた実験コロニーを5つずつ作成し、8℃、18℃、23℃、28℃、33℃の温度条件で30日飼育した。その後微分干渉顕微鏡と血球計算盤を用いて、原生生物の同定と個体数の推定を行い、共生原生生物群集に対する温度の影響を調べた。
33℃の実験区では、シロアリは約20日で全滅した。総個体数は約3万~9万で、平均個体数は18℃がもっとも小さかったが、実験区間で有意な差はなかった。種数も18℃がもっとも減少する傾向があった。Shannon-Wienerの多様度指数は温度が上がるにつれて下がる傾向が見られた。種組成の類似性を見るクラスター分析(Jaccardの係数・UPGMA)の結果、全実験コロニーは主に28℃のコロニーからなる群と、その他の比較的低温のコロニーからなる群に分かれた。前者と後者では欠落しやすい種にはっきりした差があった。原生生物の種によって生存に最適な温度に差があると考えられる。