| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-214J (Poster presentation)

植生劣化地域における糞虫群集の多様性 ‐エゾシカ(Cervus nippon yesoensis)高密度地域,洞爺湖中島の事例‐

*村井隆晃(酪農大院・野生動物),吉田剛司(酪農大院・野生動物)

食糞性コガネムシ(以下,糞虫)群集の多様性は餌としての糞量や供給源となる動物,植生などによって影響される.近年のニホンジカの増加は糞量の増加や植生の改変により糞虫群集に影響を与える可能性がある.しかし,日本において野生動物と植生の改変による糞虫群集に与える影響についての研究は少なく,特に北海道での研究例は非常に少ない.そこで本研究では,エゾシカの高密度状態が続く北海道虻田郡洞爺湖町に位置する洞爺湖中島を主な調査対象地として,洞爺湖中島の糞虫群集の多様性について考察を試みた.

調査はエゾシカが高密度に生息し植生が著しく劣化した洞爺湖中島と,近年エゾシカが急増しているが植生改変の度合いは小さい北海道勇払郡占冠村とむかわ町の計3地点の草地で行った.糞虫の採集は早川式牛糞トラップを用い,5月から10月まで月1~2回調査を実施した.

洞爺湖中島では2科6属13種1,119個体,占冠村では1科5属11種1,099個体,むかわ町では2科6属14種2,289個体の糞虫が採集された.洞爺湖中島のみ優占順位は異なるが,3地点共通でコマグソコガネ,クロマルエンマコガネ,マエカドコエンマコガネが上位優占種であった.多様性の指標として種多様度,期待種数を3地点で比較し,糞虫の発生消長の比較も行った.その結果,種多様度,期待種数ともにむかわ町が最も高く,洞爺湖中島が最も低い値を示した.発生消長について,占冠村とむかわ町は住込み屋と穴掘り屋の優占する季節が異なっていたが,洞爺湖中島は調査期間を通して穴掘り屋が常に優占していたため,植生劣化の著しい洞爺湖中島では種間で糞をめぐる競争があると考えられる.よってエゾシカの高密度化による植生改変は糞虫群集に影響を与える可能性があることが示唆された.


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