| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-215J (Poster presentation)
陸生大型貧毛類に関しては欧州でツリミミズ科を対象とした研究が古くから成されてきたが、日本を含む東アジアで優占するフトミミズ科については種の記載や生態学的調査などの基礎的な研究が未だ不十分な状態にある。
本研究ではある一つの林内で環境の異なる小さなパッチごとにミミズ相がどのように変化しているのかを明らかにすることを目的とした。調査は京都府南丹市の京都大学芦生研究林において、2011年5月から11月まで一ヶ月おきに行った。落葉広葉樹林帯の斜面下部およびそこから約500m離れた場所に位置する開けた湿地帯の2箇所にそれぞれ調査地点を設け、毎回各地点で50cm四方の方形区画をランダムに4つ作成し、区画内のミミズを採集した。採集した各個体の種判別には双眼実体顕微鏡による形態観察の他、ミトコンドリアDNAのCOI領域を利用したDNAバーコーディングを用いた。形態観察とDNAバーコーディングを併用することで、従来形質が未熟であるため形態における種判別が不可能とされている幼体に関しても判別が可能となった。広葉樹林帯の土壌表面はリターで覆われ、フトミミズ科のミミズが優占していた。これらはいずれもリター食と考えられている種であった。一方で湿地帯の土壌表面は葉状苔類や被覆性の草本で覆われていたにもかかわらず広葉樹林帯と同様にリター食種のフトミミズ科が多く採集された。両地点とも土壌浅層ではツリミミズ科のミミズが優占していた。また湿地内の冠水しているような場所でも掘り取り調査を行ったところ、ツリミミズ科やフトミミズ科のミミズに加えてジュズイミミズ科のミミズが採集された。ジュズイミミズ科は京都府内では初記録であると思われる。