| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-216J (Poster presentation)
地表徘徊性甲虫群集の研究では、ピットフォールトラップを仕掛け、2日間以上放置して落下した動物すべてを殺捕獲し、同定したという報告が多い。このような時間スケールで解析された群集は、構成個体の具体的な行動に依存して変動する群集構造を反映していない。日周活動が構成種ごとに異なり、それに伴う種間関係は時々刻々と変化しているからである。調査は、冷温帯の管理されたスギ人工林の林床で行なった。林冠は閉鎖し、亜高木層や低木層は存在しないが、草本層の植被率はほぼ100%の一様な環境である。7月下旬(盛夏)と8月下旬(晩夏)に、ピットフォールトラップを縦横12個、計144個、2m間隔で設置した。どちらの季節においても、トラップの放置時間を6時間として、1日に4回回収するという調査を2日間行なった。このような集中調査の他に、放置時間24時間の調査を3~8回行なっている。いずれの回収時にも、オサムシ類のみに着目し、種を同定すると共に、雌雄を判定し、体長と前胸背板幅を測定した後、標識を施して直ちに放逐した。盛夏にはのべ16種1523個体(10日間・16回)、晩夏にはのべ15種869個体(4日間・11回)が捕獲され、どちらもマルバネオサムシが優占していた。6時間間隔で調査を行なったとき、マルバネオサムシは主として夜間に捕獲された。クロツヤヒラタゴミムシやニセクロナガゴミムシ、ヨリトモナガゴミムシも夜間に多く捕獲された。捕獲されたトラップ位置から計算されたそれぞれの種の空間分布を、6時間間隔と24時間間隔で得たデータで比較したところ、大きく異なっていた。しかし、それぞれの捕獲回において計算された多様性指数は、放置時間が異なっても明確な差は認められなかった。これらの結果から、群集構造の日周変動について考察する。