| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-258J (Poster presentation)

森林管理に向けた生物多様性定量化の試み

*笹川裕史(日林協),金森匡彦(日林協),古田朝子(日林協)

近年,森林管理においても,生物多様性の保全を考慮することが求められている。森林域での生物多様性の保全のためには,適切な整備や森林配置に誘導する森林管理計画をたてていかねばならない。しかし,これまで森林の多面的機能については認識されていたが,森林管理が取り扱う対象である林分の空間配置や森林施業などと生物多様性との関係が明らかになっているとはいいがたい。そこで本研究では,ランドスケープレベルの森林管理と生物多様性保全の関係を客観的に評価可能にすることを目的に,生物多様性の状態,様々な林相の分布形態,これまで実施されてきた森林施業の取り組みの定量化を試みた。解析対象スケールは国有林の森林計画区単位とした。森林管理については,林分配置・齢級構成の多様化,森林施業の適切な実施,森林生態系の連続性・多様性の確保,希少種の生息・生育環境の保全の視点を基本とし,それぞれの視点について,林分の空間配置と林分構造の両側面から森林の状態を定量的に示す指数を指標として選択した。林相の区分は森林計画の際に用いられる,育成単相林,育成複層林,天然性林,未立木地・伐採跡地等,林地外とし,林相と齢級を組み合わせて一つの林分とした。林分の空間配置を定量的に示す指標には,景観生態学で景観パターンを測定する際に用いられる指数から散在度,多様度,占有率,連結性,分断度などを選択した。一方,林分構造の指標は,齢級構成や生長量の偏り度などとした。生物多様性については,既往の調査資料を多様度指数などにあてはめた。最後に,森林管理と生物多様性の各指標について関係性を解析し,森林管理がどのように生物多様性に影響を与えるか検討を行った。その際に,生物多様性の保全という観点から,ある森林管理を行った時の生物多様性の時系列的な変化に注目した。


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