| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-263J (Poster presentation)
農地の種子食ゴミムシ類による雑草制御サービスは、近年とくにその効果が注目されている生態系サービスの一つであり、欧州ではゴミムシ類の保全を目的とした緑地帯(ビートルバンク)の造成が奨励されている。日本の大規模農業において同様の緑地帯を確保することは困難であるが、最近、農業に有益な生物の保全を目的として、畦畔の植生を地際でなくやや高い位置で刈り取りを行う新たな植生管理技術(高草刈り)の開発が試みられている。しかし、この管理技術が種子食ゴミムシ類に及ぼす影響については不明である。本研究では、畑地外縁の草刈り高の違いが、畦畔および圃場内部の種子食ゴミムシ類の密度および種子採食率に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
本研究は農業環境技術研究所内の畑地圃場で行った。圃場を12区画に分割し、慣行区(畦畔の草刈り高2~4cm)、高草刈り区(草刈り高30~40cm)および放任区(草刈りなし)を、乱塊法により4反復ずつ配置した。各畦畔および圃場内部(畦畔より5m内側の地点)において、種子食ゴミムシ類の密度と種子採食率を、ピットフォールトラップ法および種子カード法(中央農業研究センターより譲渡を受けたシロザおよびメヒシバ種子を糊付けした布やすり)により定量した。
畦畔の種子食ゴミムシ類の密度は、慣行区(7個体/140トラップ)よりも高草刈り区(77個体/140トラップ)および放任区(37個体/140トラップ)において高い傾向が認められた。圃場内部では処理区による差は認められなかった。シロザ・メヒシバ種子ともに、種子採食率と種子食ゴミムシ類の密度に正の相関が認められた。本研究から、草刈り高を高めることにより、畦畔の種子食ゴミムシ類の密度と雑草種子採食率を高めることが可能であることが示された。