| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-266J (Poster presentation)

休耕田を利用したヨウサイ栽培地における節足動物相

*蝶名林涼,倉本宣(明治大学・農)

近年ますます増加する休耕田の利用方法として、畑作転換やカバークロップによる被覆、放牧等が挙げられる。しかし水田は生産の場であると同時に生物の生息の場としての価値もあり、里山における湿地環境として重要である。

そこで、今回は水田転換作物であるヨウサイ(Ipomoea aquatica Forssk.)に注目する。ヨウサイは東南アジア原産の水生植物であり、水稲のように様々な水深に適応する一方、乾田でも生育可能であるなど水管理への寛容性が高い。そのため水管理にかかる労力・コストが低く、ヨウサイ栽培を行う休耕田では生産性と湿地環境の確保の両立が安易であると考えられる。しかしヨウサイを取り巻く生物に関する研究は少ない。本研究では実際に休耕田においてヨウサイ栽培を行い、水田・休耕地との比較を行うことで、ヨウサイにより作り出される空間が節足動物相にどのようなに影響を与えるか調査を行った。

実験・調査は神奈川県川崎市麻生区黒川の休耕田において行った。2011年7月9日に休耕田に実験区を設定し、実験区は1区画3m×3mの9㎡とした。ヨウサイ栽培区・黒色マルチ使用ヨウサイ栽培区・無管理区を各4プロット、水田区2プロットの合計14区を設置した。虫類調査は9月9日より開始し、約二週間に一回の頻度で行った。直径40cmの捕虫網を用いて1区画50振り/10分でスイーピングを行い、捕獲された節足動物を記録した。

調査の結果、個体数・種数共に無管理区が最も高い結果となった。総個体数における分類群ごとの構成比を比較すると各ヨウサイ栽培地はアリやクモ等の捕食者が優占するのに対し、無管理区・水田区はカメムシ目を中心とした植食者が優占する結果となった。

本発表では各条件の種ごとの構成比・多様度指数を比較し考察を行う予定である。


日本生態学会