| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-269J (Poster presentation)

シカの個体数抑制を目的としたオオカミ再導入評価のための個体群空間動態モデル

*土屋翔平,町村尚,松井孝典(大阪大・工)

近年,日本においてシカの食害による被害が顕著である.この対策として柵による農作物被害対策や狩猟による個体数管理があるが未だ大きな成果を挙げておらず ,新たなシカの個体数管理方法としてオオカミ再導入の検討事例が出てきている.しかし,日本ではオオカミ再導入に関して定量的な評価が行われておらず正しいリスク評価ができていない.そこで本研究では,オオカミ再導入によるシカとオオカミの時空間的動態を分析するためのモデルを構築することを目的とする.

シカとオオカミの個体数は,シカの動態モデル(Milner-Gulland et al.,2004)と,オオカミの動態モデル(Nilsen et al.,2006)の捕食率が生存率や繁殖率に影響を与えるマルコフモデルに従って経時的に変化した.また,オオカミの空間的挙動に関しては,分析ユニットをパック(群れ)とし,状態変数を円でモデリングされたオオカミのテリトリー面積とその半径,各齢級のオオカミ個体数密度とした.死亡や移動によるパック内のオオカミ頭数の増減に応じて,テリトリー面積を0−17%増減させた.また,シカの可住域は変化しないものとし,オオカミはテリトリー内に含まれるシカの生息メッシュのみを対象として捕食を行うものとした.

上記モデルによるとオオカミがいない場合のシカの平衡状態は59.8頭/km2であり,そのうちオジカが27.5頭/km2,メジカ32.3頭/km2であった。シカの頭数が平衡状態に達した後にオオカミを導入するものとしてシカとオオカミの動態予測を行った。またモデルパラメータ(テリトリー面積の最小値,パック内頭数変化に伴うテリトリー面積変化の値,シカ及びオオカミの繁殖率・生存率,捕食率)の感度解析によってモデルの応答を分析した.


日本生態学会