| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-327J (Poster presentation)
自然保護区等に蓄積されている研究成果はその地域の自然環境の魅力を高める重要な要素となり得る。また、研究調査地において研究者と観光客が接し、研究成果を伝えることは有効な科学技術コミュニケーションの一つになる可能性がある。研究活動や調査地を観光資源としながら、科学技術コミュニケーションを促進するような観光プログラムを検討するためには、研究者が観光に対して持つ期待や懸念を明らかにする不可欠である。そこで、本研究はマレーシアの自然保護区を調査地とする研究者の観光に対する意識を調査し、観光へ意識に影響する要因について分析を行った。マレーシアのパソ森林保護区、ランビル国立公園、サバ州の複数の森林保護区において研究活動を行っている日本人研究者を対象にインタビュー及びWebアンケート調査を実施し、回答者の「属性」、「研究活動」と「観光に対する意識」の関連性を分析した。その結果、職位や年齢による観光への意識の違いは見られなかったが、観光による生態系の変化への懸念が大きい人、植物や動物よりも物理環境等を対象としている人は研究サイトの観光利用に対して否定的であることが明らかになった。また、観光客を受け入れることによるメリットを感じている人、中でも「研究成果公開の一環になる」、「研究サイトの認知度の向上」等の科学技術コミュニケーション上のメリットを感じている人は観光客との関わりに肯定的な意見を持っていた。以上の結果から、観光客を受け入れるにあたって、自然環境への負荷がかからないようにするためのゾーニングや観光客に向けたルール作り、また、研究者と観光客の間のコミュニケーションを円滑にするための工夫が重要になると考えられる。