絶滅危惧Ⅱ類に指定されているメダカ(Oryzias latipes)の兵庫県における分布と生息の現状を把握し，遺伝的多様性の保持に役立たせるべく，メダカのミトコンドリアDNAに含まれるチトクロームb遺伝子(cyt b)の多型について，兵庫県全域の河川等から採集したものをPCR-RFLP(Restriction Fragment Length Polymorphism)法により解析した。３年間の調査の結果，今までほとんど知られていなかった兵庫県南部地域のメダカのハプロタイプの分布と生息状況について報告する。また，これらのハプロタイプの系統樹を作成し，それらの分布に至った経緯を推察した。今年度に入って，県南部地域数カ所で，東日本型と判定される個体を採取した。このハプロタイプは市販されているメダカにも確認されており，これら個体を人為的な流入の可能性を示すものとして判断していた。しかし，これらが従来から生息するものからわずかな塩基置換により生じた可能性もあり，これら個体のcyt bの塩基配列を明らかにし，人為的流入によるものかどうか，新たな遺伝的な集団なのかを考察する。これらの結果を踏まえ，兵庫県におけるメダカの分布に影響を及ぼす因子，メダカの遺伝子の変遷，そして人為的な他地域個体の流入の現状についての報告を予定している。