| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-HS33J (Poster presentation)
三重県松阪市の阪内川を水源とする井村用水では、ヤリタナゴ(Tanakia lanceolata)とその産卵母貝となるマツカサ ガイやドブガイなどのイシガイ 類が生息している。ヤリタナゴはこれらの貝類に産卵し、この用水で繁殖していると考えられる。井村用水は農業用の用水路であるため、冬季には水量 が減少し、河床に泥が堆積する。一方、夏季から秋季は多くのヤリタナゴが観察される。そこで、この用水路のヤリタナゴの生息状況を調査し、その生存戦略について考察した。
調査は、2010年7月から月に1度すべての魚類を捕獲し、種名、体長、体重等を記録した。また、イシガイ類についても調査を行った。その結果、7月には小型のヤリタナゴが見られ、その後は、中型のものが多くなった。ヤリタナゴの数は9月まで増加した。一方、冬季にはヤリタナゴの数や魚種が極 端に減少し、その後の回復は遅れている。イシガイ類については、7月に合わせて42個を捕獲した。この結果から、ヤリタナゴは阪内川本流の取水口から流入し、用水路の水量が豊富で、イシガイ類も多く見られる良好な環境の年に、井村用水を繁殖や生育の場所として有効に利用していると考えられる。