| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


企画集会 T06-1 (Lecture in Symposium/Workshop)

暖温帯岩礁域における景観構造の空間動態予測

熊谷直喜(琉大・熱生研)

沿岸の海底景観の基盤は、多くの陸上景観とは異なり、露出した岩や岩盤も大きな割合を占めている。岩礁域の景観は海藻など植物による藻場のほか、サンゴやカキなど陸上には生息しない固着性動物による礁が主な構成要素である。沿岸域は温暖化や人為的な環境改変の影響を受けやすく、劣化・断片化など景観構造変化の予測や、生息する移動性動物の応答様式の理解が急務である。そのため、景観スケールでの広域研究例は近年次第に増加しているが、景観構造や連結性に対する生物の応答パターンやそのプロセスについての知見は依然限られている。国内の暖温帯岩礁域では、各地で従来は優占していた藻場が大きく衰退する現象が問題となっており、代わりにサンゴ礁が発達する報告例も増えている。本研究では、その推移メカニズムや、それらの岩礁域に生息する底生魚類の応答様式の推定を目的とした調査を行った。調査地は長崎県、鹿児島県、高知県の沿岸であり、km スケールで海底景観構造と底生魚類の出現を連続的に広く粗く捉える連続的調査を行っている。このため調査には海底方向と前方方向の 2 機のビデオカメラを用い、遊泳しながら底生生物群集と底生魚類を同時に撮影した。底生生物については海藻、サンゴ、八放サンゴなどの出現頻度を計測した。計数対象とした魚類は、藻場とサンゴ礁への応答が予想されるメジナ類、ベラ類、ニザダイ類、スズメダイ類である。また調査者はデータロガーと GPS を携行し、環境・位置データを連続的に記録した。さらに各魚類が利用する空間範囲を connectivity index を用いて表現し、各底生生物・環境要因の影響範囲を最尤推定した。本講演では、おもに群集生態学のアプローチから浅海岩礁域の景観生態学について、近年の進展や問題点を整理する。さらに、以上の研究内容を紹介し現在までの成果を報告する。


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