| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
企画集会 T09-5 (Lecture in Symposium/Workshop)
背景と目的:モザイク状の森林景観において生息環境とは異質な林分に直面した鳥類は、その林分を回避するかあるいは移動先として選択しなければならない。このような選択の違いは彼らにより散布される種子の量や空間分布に影響を及ぼすかもしれない。しかし、林分間の鳥類の移動を観測した研究は多くはなく、その可能性は十分には検討されていない。本研究では林相の異なる林分境界で鳥類の行動を観察し、種子散布者の林分間の移動状況を記録した。そして、林相の違いが種子散布者の移動に影響を与えるのか明らかにした。
方法:鳥類の越冬期間中の2010年12月から2011年2月にかけて宮崎大学田野フィールドにおいて、1)スギ壮齢林とスギ・ヒノキ若齢林、2)スギ壮齢林と常緑広葉樹林、3)伐採跡地と常緑広葉樹林が互いに隣接する林分境界で鳥類の移動を観察した。林分境界から片側10mを「林縁」、それ以上を「林内」と区分して鳥類が移動した場所を個体別に記録した。各林縁あたり約3時間観察した。記録された鳥類は主な食性に基づき種子散布者を特定し、さらに主な生息環境により森林性、ジェネラリスト、下層利用種、開けた環境を好む種の4グループに分けた。
結果:種子散布者は、常緑広葉樹林からは移出しにくいがスギ壮齢林からは移出しやすく林内まで移動する傾向があった。種子散布者のうちジェネラリストは林縁には留まらずに隣接林分の林内まで移動する傾向があり、その他の3グループは生息林分から移出しにくい傾向が見られた。鳥類により供給される隣接林分からの種子の量や空間分布はこのような行動の影響を受ける可能性が示唆された。