| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
企画集会 T09-6 (Lecture in Symposium/Workshop)
マテバシイの堅果が、実際に母樹からどこまで散布されているのかを調べるため、鹿児島大学農学部附属高隈演習林第4林班のマテバシイが優占する常緑広葉樹林と、スギ人工林が隣接する林分に約1.2 haのプロット(猪鼻サイト)を設定し、母樹と堅果の親子解析を行った。広葉樹林内に生育する母樹の葉(n = 52)と、スギ人工林内で発見された、マテバシイ堅果(n = 174)を採集し、マテバシイのマイクロサテライトマーカー10座を用いて親子解析を行った。堅果は人工林の広い範囲において採集されたが、遺伝解析によって親子関係が明らかになった堅果は全体の13.2%(n = 23)であった。親子間の平均距離(± SD)は33.0±23.1 mで、最大97.1 mであった。堅果は、広葉樹林の様々な場所から運ばれており、偏りは見られなかった。
また、異なるタイプの森林が隣接するような場所での野ネズミの活動状況を把握するために、猪鼻サイトから200 mほど離れたマテバシイが優占する常緑広葉樹林とスギ人工林が隣接するサイト(大野サイト)で、2009年12月から2010年11月にかけて捕獲したアカネズミ定住個体に小型発信機を装着し、行動圏を調査した。その結果、15個体のアカネズミの行動圏が明らかになった。15個体中4個体が広葉樹林内で、6個体がスギ人工林内で、5個体が林相境界をまたいで行動圏を広げていた。それぞれの個体の平均行動圏面積は、1401.4 m2、1960.2 m2、2209.8 m2であった。林相境界付近の利用は活発であり、両林相を利用した個体とスギ人工林のみを利用した個体の行動圏が重複しているケースも見られた。このような場合、広葉樹林内から運搬されたマテバシイ堅果が長距離散布される可能性があると考えられた。