| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
企画集会 T10-2 (Lecture in Symposium/Workshop)
研究成果を社会的な意思決定につなげたいというのは、保全に関わる生態学者の偽らざる思いである。しかし、生態学者が実際に現場の意思決定に貢献できている事例は決して多くない。この現状について演者は、生態学者が考える「意思決定支援」「提供すべき情報」と、現場が求めるそれの間にギャップがあることが最大の原因であると考えている。例えば市町村の意思決定に必要な情報と、県の意思決定に必要な情報は必ずしも一致するとは限らない。もっと言えば、ある成果が市町村における意思決定に貢献できたとしても、同じプロトコルで得られた成果が県に貢献できるとは限らない。なぜなら、現場はその主体ごとで実現目標、すなわち保全に向けた「出口」が異なるからである。「意思決定支援」に向けたプロトコルは、一般化することが非常に困難である。様々な場面において生態学者が意思決定に貢献するためには、支援対象の「出口」を把握し、それに合わせてデータの集積、活用、成果(得られた知見)の提供を行うというカスタムメイド的な対応が必要になる。
本講演では、演者がこれまで関わってきた、もしくは現在関わっている社会的な意思決定につながる町レベル、県レベル、国レベルそれぞれの研究および取り組みを簡単に紹介し、特にデータ収集、集積に主眼を置いてそれぞれの違いを考察する。そして生態学研究が社会的な意思決定にどのように貢献できるかについて、演者の考え方を論じたい。あくまで演者の経験に基づく考え方なので、ぜひ会場からも多くの意見をいただき、有益な議論が行えることを期待している。