| 要旨トップ | ESJ59 自由集会 一覧 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
自由集会 W32 -- 3月19日 17:30-19:30 L会場
これまでの炭素循環研究は単一同齢林において多く行われ、森林生態系における二酸化炭素吸収は成長の速い若い林において多く、森林が成熟するとともに減少して最終的にはゼロになると考えられてきた。しかしながら近年の研究では林齢300年を越えるような原生林でもかなりの二酸化炭素を吸収していることが示唆されている。一般的に成熟した森林では様々な発達段階がモザイク状に分布しており、その構造は一様ではない。多様な構造による局所的な環境条件の違いや、植生動態の違いが炭素循環機能にも影響を与えていると考えられる。しかしながらこのような森林におけるモザイク構造を踏まえた炭素循環研究は少なく、なぜ老齢な森林でも二酸化炭素を旺盛に吸収できるのかという疑問に答えるには、より詳細に森林構造および動態とそれらの炭素循環との関係性を理解する必要があるだろう。今回のMAFESでは日本における代表的な極相林であるブナ林に注目したい。まずブナ林の森林構造とその動態についての研究事例を中心に解説する。その上で炭素の吸収を駆動する純一次生産量と炭素の大きな放出経路である土壌呼吸を例に取り、ブナ林における炭素循環の特徴とその森林構造や動態が炭素循環にどのような影響を及ぼし得るのかを考えたい。
コメンテーター 大塚俊之(岐阜大学流域圏科学研究センター)
ブナ林の森林構造と動態
ブナ二次林における純一次生産量と粗大有機物生産量について
極相ブナ林における土壌呼吸速度の空間的変動と林分構造