| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) B1-04 (Oral presentation)

都市部における希少植物の保全とその意義-埼玉県和光市におけるヒロハアマナ、タマノカンアオイ、カワモズクの保全ー

*高橋絹世,高橋勝緒,渡辺康三,竹内綾子,赤松祐造,飯島孝通(NPO和光・緑と湧き水の会)

序:都市部に残存する小規模な緑地にも絶滅危惧種等の希少植物を見出すことができる。埼玉県和光市は東京都に接する都市化の進む地域であり、開発と自然環境の保持の両立が重要課題となっている。和光・緑と湧き水の会では、この地域での緑地および湧水地の環境調査や保全、身近な自然の大切さを広める活動を十数年続けている。本報では、このような都市部の緑地や湧水地で見出された種々の希少植物のうち、下記の3例について、市民との触れ合いの中での保全の在り方を報告する。

ヒロハアマナ:全国の絶滅危惧II類に属し、和光市谷中地区の草原に生育していたが、1997-99年の宅地開発により草原は消滅した。この開発中球根を含む土壌を採取し、和光樹林公園等に移植し保存を図った。現在、林間の約500㎡に良く生育している。2005年には、原生地付近の古民家園の庭に再移植し生育している。

タマノカンアオイ:絶滅危惧種であり、埼玉県の保護条例指定種となっている。2008年、和光市「新倉ふれあいの森」で約10株の自生が認められ注意深く保護している。

カワモズク:1998年、和光市白子地区の湧水群で発見された埼玉県絶滅危惧種。その生育環境を調べ、水質、水温、日照、底質などの条件がそろう湧水の流れに生育することがわかった。2011年白子地区「大坂ふれあいの森」で湧水の流れを整備し、多数のチャイロカワモズクが繁茂した。

まとめ:以上の事例は、都市部にあって開発に伴いやむなく移植保護を行い残存した例、注意深く保護・観察を続けているもの、および環境の整備により生育が促進された事例を示した。この他、当会はイチリンソウやヤマブキソウなどの多くの貴重植物を周囲の生態系と共に保全する活動を続けている。


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