| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(口頭発表) B2-13 (Oral presentation)
人為的な生態系改変に対する生物多様性の変化を定量的に評価することは保全生態学の重要な課題である。種数は一般的な多様性指標であるが、生態系における種間の役割や機能の違いを考慮していない。一方、種の形質の違いを考慮した機能的多様性は、生態系プロセスや機能に関連する有効な指標と考えられている。
一生を淡水で過ごす純水魚類は、淡水生物の中でも脆弱な分類群であり、わが国でも、レッドリストに記載される種の割合が劇的に増加している。この危機的状況にもかかわらず、実際にどの程度の局所絶滅がおこっているのか、機能的多様性がどの程度変化しているのかについてはほとんど知られていない。
本研究では、国内40湖沼を対象に、過去(潜在的な分布)と現在(2000年以降)の在来純淡水魚類相を比較し、種数と機能的多様性の変化を評価した。魚類相データは、文献や標本資料から収集し、現在の魚類相については、流入河川の魚類相についても収集した。出現全種について、資源利用や生活史特性に関する16の形質情報を整理し、機能的多様性を算出した。
結果、現在では、平均すると28%の種が消失していた。しかし、流入河川の魚類相を含めると、消失率は23%だった。これは、湖ではみられなくなったメダカなどが、流入河川に残存しているためである。機能的多様性も、平均で25%(流入河川を含めると19%)減少していた。種数の変化の大きさと機能的多様性の変化の大きさを線形回帰した結果、傾きが0.8であったことから、機能的冗長性は低いと考えられた。本発表では、ヌルモデル(ランダムな種の消失を仮定)を用いて、局所絶滅と機能的多様性との関係について解析した結果も合わせて紹介する。