| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) C1-01 (Oral presentation)

密度効果がもたらす群集レベルでの帰結:密度―体サイズ関係に注目して

*森照貴(土研・自然共生研究セ), 齊藤隆(北大・FSC)

群集の形成プロセスを明らかにすることは、群集生態学における主要なテーマである。古くから種間競争などの生物間相互作用は、群集の形成プロセスに影響を及ぼすと考えられてきた。しかし、種間競争の帰結となる明確な競争排除が、実際の群集で観察されることは少なく、群集の形成プロセスに対して、競争がどのような影響を及ぼすのかに関しては明確に示されてこなかった。さらに、同じ餌資源を巡っての種間競争は、潜在的に競争関係となりえる種群の合計バイオマス(つまり、同じギルドに属する種群の合計バイオマス)に依存すると考えられ、群集が飽和状態に近いほど、競争の重要性が増すと考えられる。そこで、本研究ではギルド分けが簡便な河川底生動物群集を対象に、撹乱の強度に応じて密度が変化することに着目し、密度に依存して変化する競争の度合いが群集の形成プロセスに及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。

調査は北海道沿岸域を流れる30の山地小河川で行い、採取された底生動物を4つのギルドに分けた(藻類食者・有機物収集食者および破砕食者・有機物濾過食者・捕食者)。藻類食者に属する種の分布パターンは大きく異なり、①どこにでも出現する種、②撹乱の強い(種群の合計密度が低い)場所のみに出現する種、③撹乱の弱い(種群の合計密度が高い)場所のみに出現する種、④明確な傾向が見られない種、の4つに分類された。藻類食者に属する種群が多くなるほど競争が強くなると考えられたが、種群の合計バイオマスが増加するほど、③に該当する種の個体サイズが低下していたのに対し、①に該当する種の個体サイズは変化しなかった。つまり、優占種の密度が高くなることで、群集が飽和に近付き、希少種が負の影響(体サイズの低下もしくは種の排除)を受けることが示唆された。


日本生態学会