| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) C1-09 (Oral presentation)

マレーシア山地林における林道建設がフン虫の群集構造に与える影響

*新納雅裕(広島大・総合科学),保坂哲朗(首都大・都市環境),奥田敏統, 山田俊弘(広島大・総合科学),Nur Zati Akma biriti Mustafa(FRIM)

熱帯林での伐採は択伐が主流である。択伐時に造られる林道は生物多様性へ影響を及ぼすと言われているが、この影響を研究した例は少ない。フン虫は哺乳類の糞をエサや育児の場として利用する。フン虫が糞を土壌に埋設する行為は、糞の中に含まれている種子を散布したり、土壌状態を改善することが知られている。またフン虫は森林の変化に非常に敏感なため、指標生物としての役割も担っている。そこで、本研究は択伐林内の林道や集材所がフン虫の群集構造にどのような影響を与えるかを明らかにすることを目的とした。

調査はマレーシア、ペラ州テメンゴール森林保護区で行った。保護区内の集材所、基幹道、搬出道、および森林内(集材所または基幹道から10 m森林に入った場所、搬出道から10 m森林に入った場所、集材所または基幹道から30 m森林に入った場所、搬出道から30 m森林に入った場所、集材所、基幹道、搬出道のいずれかの場所から60 m森林に入った場所)に、計95個のピットホールトラップを設置し、フン虫の種構成と個体数密度の調査を行った。

今回の調査で2科11属39種1286頭のフン虫が採取できた。フン虫の個体数、種数ともに基幹道や集材所、搬出道に比べ、森林内で有意に大きかった。しかし、森林内でも集材所または基幹道から10 mしか離れていないトラップでは基幹道や集材所、搬出道と有意な差はなかった。

集材所または基幹道はその周辺の森林のフン虫の個体数、種数に影響を及ぼすことがわかった。調査地内の集材所と基幹道の占める面積は3%であるが、影響のあった搬出道と基幹道から両脇10 mを入れると、14%になる。生物多様性保全のためには、伐採強度だけではなく、林道密度についても考慮する必要がある。


日本生態学会