| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(口頭発表) C1-12 (Oral presentation)
日本最大級の砂丘である鳥取砂丘では、1950年代から行われた防風林の植林の影響を受けて、外部から植物が侵入し、砂丘の草原化・森林化が進んでいる。さらに近年ではキツネ、イノシシをはじめとする哺乳類の痕跡が多く見られ、シカやタヌキなどの動物の目撃情報も得られている。一方、今まで鳥取砂丘に生息している哺乳類全般を対象とした研究はほとんどない。哺乳類による砂丘の空間的・時間的利用を明らかにするために、本研究では、人工除草が行われていない鳥取砂丘西部において調査を行った。
2012年4月から、月に一回痕跡調査を行った。調査地全体をほぼ均等に観察できるよう総延長約6.1kmのルートを設定し、ルート上で見られた哺乳類の痕跡の画像と位置情報を記録した。また、哺乳類の活動する時間帯と行動を明らかにするために、2012年8月下旬から調査地内に11台の赤外線センサーカメラを設置し、センサー検出範囲内に出現した哺乳類のビデオを撮影した。その結果、痕跡調査では、イノシシとキツネの足跡と糞が多く見られたが、季節によって痕跡の数は大きく異なった。痕跡の分布は全体としては汀線と防砂林の間の調査地中部に集中していた。センサーカメラによりキツネ、イノシシ、アナグマ、シカ、ネコなどが撮影された。カメラの設置場所や季節にかかわらず、キツネが最も多く撮影された。シカ、アナグマの映像はそれぞれ9月、10月以降に得られ、時期およびカメラ設置場所によって撮影される種構成が異なる傾向が見られた。また、昼間に比べると、夕方から夜明けまでの時間帯に撮影された哺乳類が明らかに多かった。結果から、哺乳類は砂丘の空間を選択的に利用していると考えられる。また、哺乳類の活動には時間的なパターンがあり、季節的にも変化していたと言える。