| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) C2-23 (Oral presentation)

琵琶湖周辺の水田地帯における2倍体および3倍体フナの季節的出現消長と当歳魚の成長

*中野光議,三品達平,渡辺勝敏(京大院理)

従来、日本に生息するフナCarassius auratus の中で、ギンブナC. a. langsdorfi は主に3倍体の雌からなる雌性発生種であり、交雑起源だと考えられてきた。しかし近年、遺伝学的な手法を用いた研究により、3倍体のフナは多起源であり各地で平行的に2倍体の種から生じており、同所的に生息する2倍体と同種であることが示唆されている。またフナの生態に関する従来の研究により、2倍体と3倍体は異なる生態をもつことが示唆されている。以上の知見よりフナは、種の倍数性多様化による生態的多様化として進化生態学上重要な現象をもつ可能性がある。本研究は、琵琶湖に生息するフナについて各倍数体間の生活史の相違を明らかにすることを目的に行った。

琵琶湖沿岸の水田地帯に位置する水路とビオトープ池、およびヨシ帯において周年を通してフナを採捕した。さらに個体ごとに遺伝学的な手法を用いて倍数性を判定し、鱗の年輪を用いて年齢査定を行った。その結果、2倍体と3倍体間で水田地帯における季節的出現消長が異なり、3倍体は冬期に水田地帯に残留する個体が多いこと、雌の繁殖時期が早いことが明らかになった。成長速度については、3倍体の方が比較的速いことが示された。仔稚魚を含む当歳魚については、水路等の各調査地において各倍数体間で出現する個体数や季節的な移動様式が異なることが明らかになった。

以上の結果により、フナは各倍数体間で生涯繁殖成功度や雌の繁殖戦略、当歳魚の好む生息場所等の生活史が異なっていることが示唆され、倍数性の多様化が生態的多様化をもたらしていると考えられる。


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