| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(口頭発表) D1-02 (Oral presentation)
外来種が引き起こす諸問題の中で、生物多様性の喪失は喫緊の課題の一つである。生物多様性の最も基本的な指標である種数は、(調査区域の)面積の拡大に伴って増加することが知られており(種数―面積関係)、魚類群集においても広く観察されるパターンである。しかし、面積の増加に伴う種数の増分に対して、外来種が及ぼす影響に関する知見はこれまで示されてこなかった。そこで、本研究では、2009年夏に北海道千歳市を流れるママチ川に設けた48調査区(長さ18~179m;平均幅1~7m)で実施した魚類相調査のデータセットを用いて、外来サケ科魚類ブラウントラウト(Salmo trutta)が「いる」調査区(35調査区)と「いない」調査区(13調査区)で、種数-面積の関係を比較した(ただし、ブラウントラウトは稚魚と成魚で別カテゴリーとした)。その結果、ブラウントラウトの存否に関係なく調査区内のカテゴリー数は面積が大きくなるにつれて増加した。ただし、ブラウントラウトが「いる」調査区のカテゴリー増加率は「いない」調査区よりも小さかった。つまり、外来種であるブラウントラウトがカテゴリー数の増分を抑制することが示唆され、生物多様性の喪失はより大きな空間スケールで顕在化する可能性が考えられた。