| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(口頭発表) D1-04 (Oral presentation)
現在、沖縄島に分布する淡水性カメ類は、在来のリュウキュウヤマガメ(以下、ヤマガメ)、以下外来のセマルハコガメ、ミナミイシガメ、クサガメ(以下、外来イシガメ科3種)、アカミミガメ、およびニホンスッポンの計6種である。また、ヤマガメと外来イシガメ科3種との交雑個体もそれぞれ見つかっている。本研究では、文献・現地調査により同島におけるこれらの分布を明らかにし、外来イシガメ科3種の分布がヤマガメ生息地に拡大する可能性を考察する。
文献調査では、地域誌など83報のほか新聞記事から淡水性カメ類の分布記録を抽出した。現地調査では、2010、2011年に延べ326水系において目視で分布を確認した。
ヤマガメは、名護市や本部半島などの北部、特に大宜味村塩谷と東村平良を結ぶ県道以北の国頭地域に分布が集中していた。また、県人口の約8割が住む中南部では北部から違法に持ち込まれたとされる個体の記録も多く確認された。外来カメ類および交雑個体は、いずれも中南部に分布が集中していた。多くの交雑は、北部から中南部に持ち込まれたヤマガメと外来イシガメ科の間で生じていると考えられる。外来イシガメ科3種は、名護市や本部半島でも見つかっているが、国頭地域では確認されていない。しかし、ミナミイシガメは、ヤマガメとの交雑個体が国頭地域で見つかっており、同地域にすでに分布している可能性がある。アカミミガメは、外来イシガメ科3種より広域で確認されたが、国頭地域では極めて限定的な分布であった。一方、ニホンスッポンは、食用・養殖目的で北部に持ち込まれており、国頭地域でも比較的広く分布していた。外来イシガメ科3種は、現在ペット利用が主であるが、例えば漢方用の需要が増加し、島内で養殖されるようになれば、ニホンスッポンと同様にヤマガメの主な生息地である国頭地域にも持ち込まれ分布を拡大する可能性がある。