| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) D1-08 (Oral presentation)

外来昆虫ブタクサハムシの移入地環境への適応:全国各地における光周性の地理的変異

*田中幸一(農環研),村田浩平,松浦朝奈(東海大・農)

外来生物が移入地に定着し分布を拡大するためには、移入地の環境に適応しなければならない。移入地の環境は原産地とは異なるため、適応の過程で特性が変化することがある。北米原産の外来昆虫であるブタクサハムシは、1996年に千葉県で発見されたが、その後急速に分布を拡大し、現在までに沖縄県を除く全都道府県で発見された。このように急速に分布を拡大したため、本虫の移入時の生活史特性は、各地域の気候や寄主植物のフェノロジーに適しているとはかぎらず、移入後に生活史特性が変化する可能性がある。

ブタクサハムシは、短日により成虫の生殖休眠が誘導される。演者らはこれまでに、本虫における生殖休眠誘導に関する光周性が、日本に移入後に変化した可能性の高いこと、全国数地点で採集した系統について地理的変異があることを報告した。この傾向をさらに確認するため、北海道から鹿児島県まで全国各地で採集した系統について、光周性を調査した。その結果、全国的な傾向としては、高緯度地点で採集した系統ほど同一日長における休眠率(休眠個体の割合)が高いことを確認した。しかし、個々の系統における結果を詳しくみると、全国的傾向からはずれる場合があった。たとえば、北海道(苫小牧)の系統は、東北北部(弘前市および盛岡市)の系統より休眠率が低かった。この要因として、各地に移入してからの経過年数や移入経路、寄主植物のフェノロジーの違いなどが考えられる。


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