| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(口頭発表) E1-04 (Oral presentation)
マツ科トウヒ属のエゾマツ(Picea jezoensis)は、北海道、サハリン、千島列島に広く天然分布し、北海道では針広混交林を構成する主要な針葉樹である。近年になり、天然林のエゾマツ資源の劣化が指摘され、資源回復に向けた様々な取り組みが行われるようになってきており、発表者らは、地理的変異の研究や人工造林に関係する各種技術開発に取り組んでいる。エゾマツ天然林の保存方策や人工造林の種苗の配布区域を策定する際には、地理的な遺伝変異に関する情報が必要である。エゾマツの地理的変異を解明する研究の一環として、北海道内の天然分布域全域から15集団を選定し、集団ごとにそれぞれ10個体から球果を採取した。昨年の球果および種子の形態の解析では、明瞭な集団間差は見られず、集団内変異が大きいことを報告した。今回は、採取した種子の発芽過程を調査した。アルコール選別、流水処理後の種子の発芽率は全体の平均が52%だった。集団別発芽率は、最高72%から最低34%まで差があり、集団間に有意な差が検出された。発芽試験開始4日目までに全発芽種子のうち77%が発芽し、この期間の発芽数の少ない集団は、最終的な発芽率も低い傾向が見られた。