| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(口頭発表) E1-05 (Oral presentation)
埋土種子集団は森林の撹乱後の植生回復に貢献している。本研究では四国暖温帯上部の天然林における立地別、土壌深度別の埋土種子組成を調べるとともに、埋土種子の調査方法による組成の違いや得失を明らかにした。
調査は四国森林管理局管内の市ノ又渓谷風景林で行った。主な構成種は尾根にヒノキ、ツガ等、斜面にモミ、アカガシ等である。2012年4月に尾根、斜面中部、斜面下部の3カ所からそれぞれ5カ所、計15カ所を選び、1カ所から層別(0-5cm、5-10cm、10-15cm)に3点、計45点の土壌サンプルを採集した。サンプルサイズは20cm×20cm×5cm(2L)である。採集した土壌サンプルはプランターに入れて温室に置き、発芽試験法により埋土種子数を推定した。また、別途に上記15地点で0-5cm層を採集した。径2mm以上の種子を目視で選別し(直接検鏡法)、2mm未満の種子は土壌を50%炭酸カリウム溶液に浸した後遠心分離器にかけ、上澄みから実体顕微鏡を使い選別した(比重選別法)。
発芽試験法により推定された埋土種子数は尾根で21種2290個/㎡、斜面中部で24種1205個/㎡、斜面下部で28種1715個/㎡だった。種数は斜面下部が有意に多く、埋土種子数は尾根が有意に多かった。種子数はヒサカキが最も多く、カギカズラ、イイギリ、オンツツジ、サルナシと続いた。土壌が深くなるに従って種数、種子数が減少する傾向が見られ、尾根の種子数では有意差が見られた。直接検鏡法+比重選別法では、カギカズラなど微細な種子が検出できなかったが、モミやアカシデなど発芽試験法では出てこなかった樹種が検出された。検出にかかった労力を計算したところ、直接検鏡法+比重選別法は1L当たり10人・時以上かかったが、発芽試験法では2人・時以下だった。発芽試験法は労力が比較的かからない上に微細種子の検出力が高いと言える。