| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(口頭発表) E3-32 (Oral presentation)
発芽した場所から移動せずに一生を過ごす植物は、次世代を残し、分布を広げるために種子を散布する。そのために種子とそれを包む果肉や果皮は、風・水・動物などの力を利用することができる様々な形態を発達させてきた。動物の中でもとりわけ果実食の鳥類は種子散布に大きく貢献しており、その種子散布量は鳥類の訪問頻度と滞在時間に関係していると考えられる。
本研究では、近畿大学奈良キャンパス(奈良市中町)において最も利用鳥種が多いと報告されており、果実が大きいため採食に時間がかかるヤマガキ(Diospyros kaki var. sylvestris)を調査対象とした。ヤマガキは果実内の種子が大きく、周りのゼリー状物質が哺乳類の咀嚼をすり抜ける効果もあるため、主な種子散布者は哺乳類であると考えられているが、本研究ではヤマガキの種子散布に対する鳥類の役割を解明した。
調査は、近畿大学奈良キャンパスに自生しているヤマガキを対象に行った。ヤマガキの胸高直径を測定し、ヤマガキの幹を中心とする半径5mの円内に生育している木本植物の個体数・胸高直径を記録した。ヤマガキの果実成熟期に各個体の結実数を目視で計測し、樹下に種子トラップ(半径40㎝、面積0.50㎡)を6個ずつ設置した。その後、種子トラップ内の鳥類の糞の数と落下している種子(果実)数を種ごとに計測した。また、果実成熟期の午前中にヤマガキに来る鳥類の種と個体数を定点調査で記録した。この時、ヤマガキに来た鳥類が果実のみを利用しているのか果実内の種子ごと利用しているのかも確認した。
植生調査においてはヒサカキが最も多く確認された。種子トラップ内には周辺植物の種子(果実)が最も多かったが、鳥類の糞も確認できた。また、鳥類調査では2013年1月現在、7種82個体の訪問が確認され、ヒヨドリ、メジロ、シジュウカラ、ハシブトガラス、エナガ、シロハラでは採食行動が確認された。