| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) F2-17 (Oral presentation)

農業用小水路・支線水路における植物の出現特性と環境要因

*松本さおり(新潟大院・自然科学),石田真也(国環研),高野瀬洋一郎((株)グリーンシグマ),久原泰雅(新潟県立植物園),紙谷智彦(新潟大院・自然科学)

水田地帯の農業用水路は、1950年代以降の圃場整備に伴い、土水路からコンクリート水路への構造転換を中心とした改修が実施されてきた。また、農業用水は、河川から取水されて水田や再び河川まで到達する間、規模の異なる3タイプの水路(幹線、支線、小水路)を階層的に流れる。従って、現在の農業用水路網は、各水路の構造や階層の組み合わせにより多様な環境が創出されていると考えられる。日本では、かつての水田雑草を含む多くの水湿生植物の減少が懸念されている。今後、これらの植物の効果的な保全のためには、水田圃場だけでなく農業用水路においても水湿生植物の出現パターンを明らかにする必要がある。

本研究は、農業用水路の構造と階層の組み合わせの違いが、水路内に出現する植物の種数及び種組成に与える影響を明らかにすることを目的とした。

調査は越後平野中西部の農業用水路151本で行った。連続する1m2の調査区を小水路で10個、支線水路で60個ずつ設置し、初夏と秋に各調査区内に出現した水湿生植物の種名を記録した。各水路の構造、水路高、幅、水深及び土厚を記録し、水路内の浚渫作業(江ざらい)の有無に関する聴取り調査を行った。

調査の結果、計82種の水湿生植物が出現した。水路間の種組成の類似性を明らかにするためNMDSを用いて水路を序列化した。その結果、土水路間では種組成が類似する一方、コンクリート水路間では種組成が多様であった。コンクリート水路では、各要因が水湿生植物に与える影響を明らかにするため、GLMMを用いた解析を行った。小水路と支線水路で結果の傾向は異なり、小水路では秋季水深、支線水路では初夏水深が出現種数に負の影響を与えていた。これらの結果をもとに、水湿生植物の生育地として望ましい水路環境について検討する。


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