| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) F2-19 (Oral presentation)

温帯性針葉樹の植生帯での位置づけ-森林動態,古生態資料からの考察

*高原 光(京都府大・生命環境),大住克博(森林総研・関西),平山貴美子,佐々木尚子(京都府大・生命環境)

従来の植生帯論では,日本列島の温帯域に分布している温帯性針葉樹の位置づけは明確ではなく,中間温帯林や特殊な立地に成立するマイナーな構成要素として認識される場合が多かった。しかし,近年の古生態学的研究成果から,温帯性針葉樹が人間活動の活発になる以前には広く優占していた地域がある。1000年前以前には,西日本の日本海側地域ではスギが優占する針葉樹林が拡がっていた(高原,1994)。内陸域の京都盆地では常緑広葉樹にスギ,ヒノキ科,コウヤマキが混生していた(佐々木ほか,2011など)。また,大阪平野では,常緑広葉樹とスギ,ヒノキ,コウヤマキ,モミなどが高率で混生(パリノ・サーヴェイ,1998;辻本・辻,2002;北川,2008など)し,伊豆半島ではスギ,コウヤマキが優占していた(叶内,2005)。木材利用の面からみれば,古墳時代や古代にはヒノキ,コウヤマキなどが建築材料などとして大量に使われてきた(島地・伊東,1988,鈴木,2002など)。また,琵琶湖湖西では,アカマツ,コナラなどから構成される二次林が放置された後の過去10年間では,スギ,ヒノキの新規加入率が高くなっている(大住,未発表)。このように人間活動の活発になる以前の暖温帯の植生は,現在の植生に比べて,はるかに多様な温帯性針葉樹が多く混生する森林であり,近年,放置された二次林にも温帯性針葉樹が増加している。このような古生態や森林の動態から,以下の疑問を提起したい。1.現在の冷温帯下部に偏って分布する天然スギ群集は残存個体群ではないか?2.西南日本の暖帯林の極相は,針広混交林(照葉樹+温帯性針葉樹)ではないか?3.歴史的に針葉樹資源を使い尽くした後を見て、暖帯林=照葉樹林と理解しているのではないか? 


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