| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) G1-08 (Oral presentation)

ミジンコの可塑性は何によって決まるか:種間・種内クローン間・齢間にみられる誘導防衛形態の比較

*永野真理子(東大・総合文化),吉田丈人(東大・総合文化,JST PRESTO)

ミジンコ(Daphnia属)は、捕食者カイロモンに反応して明瞭な防衛形態を発現することから、表現型可塑性のモデル生物として注目されてきた。ミジンコに対する捕食圧は、一般的に、捕食者の捕食様式によって体サイズ依存的に決定される。そのため、体サイズの大きいミジンコは、より大型の餌を選好する視覚捕食者の魚に対して、より大きな可塑性を示すと予想される。一方、体サイズの小さいミジンコは、口器サイズに依存して小型の餌を選好するフサカ幼虫に対して、より大きな可塑性をもつと予想される。しかし、実際には、ミジンコの体サイズは種間だけでなく、種内であってもクローン間や齢間で異なる。そこで本研究は、体サイズの大きいミジンコ(D. pulex)と小さいミジンコ(D. ambigua)の2捕食者(フサカ幼虫と魚)に対して示す形態形質の可塑性を、種間・クローン間・齢間のレベルで比較し、ミジンコの可塑的防衛と体サイズの関係を評価した。可塑性の大きさを種間で比較すると、どちらのミジンコ種も魚よりフサカに対する可塑性が大きく、フサカに対する可塑性の大きさは2種間で違いがなかった。また、ミジンコは齢により段階的に体サイズが大きくなるので、齢が進むにつれて魚に対しては可塑性が大きくなり、逆にフサカに対しては可塑性が小さくなると予測される。しかし、どちらの捕食者に対しても、2種のミジンコともに、齢段階と可塑性の大きさには相関関係がみられなかった。以上から、ミジンコの可塑性は体サイズに依存して決まる捕食圧に単純に従うのではなく、種毎や齢毎に特異的に決まっていることが明らかになった。


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