| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(口頭発表) G1-09 (Oral presentation)
ミジンコ属(genus Daphnia)の多くは、捕食者の放出する物質(カイロモン)を感受すると、可塑的に頭部の形態や殻刺の長さを変化させ、防御形態を形成する。これらの防御形態は、近縁種間で様々に異なっており、それぞれの種が異なる環境や捕食者に適応した結果であると考えられる。このようにミジンコ種間において多様な防御形態が進化してきた背景としては、種内においても防御形態やその形成頻度に遺伝的なバリエーションが存在し、それが捕食者の有無に応じた生殖隔離とその後の種分化につながったことが予想される。本研究では、日本国内複数箇所より採集したミジンコ Daphnia pulex より確立した系統を用いて、このようなバリエーションが実際に個体群ごとに存在するかを調べた。地理的に離れた池から採集した6系統について、環境要因(カイロモン濃度)と表現型(防御形態の形成率など)の関係(リアクションノーム)を比較したところ、これらは「大きな防御形態を高頻度で作るグループ」と「あまり大きな防御形態を作らず、その頻度も低いグループ」の二つに分かれることがわかった。ミトコンドリアDNAを用いた分子系統解析およびマイクロサテライト解析の結果、これら日本の二つのグループは、それぞれ独立して北米より侵入した個体群に由来し、遺伝的に完全に分化していることが明らかとなった。一方でグループ内においても若干のリアクションノームの差異が確認でき、移入後においてもそれぞれの環境に応じて進化した可能性も予想された。