| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(口頭発表) G3-27 (Oral presentation)
耕作放棄地における二次遷移については、多数の研究がある。しかし、それらの研究は放棄年数の異なる立地の植生を比較したものが多く、同じ場所で長期的に植生遷移を追跡した研究は少ない。そこで、同一圃場で耕作放棄試験を行い、植生を調査するとともに、出現したセイタカアワダチソウの個体群動態モデルを構築し、競合種であるクズの侵入時期を変えた数値実験を行った結果を報告する。
茨城県つくば市農業環境技術研究所内の圃場(20 m×30 m;前作は大麦)を1995年5月18日に耕起し、耕作放棄した。0.5 m×0.5 mの方形区(N=10)で毎年5月、11月に植生調査を行い、セイタカアワダチソウのシュートを当年生実生、非開花個体、開花個体別に計数した。このデータを用いて、セイタカアワダチソウの非開花個体、開花個体の2生活史段階に基づく、密度効果とクズの被覆による抑制を組み込んだ推移行列モデルを構築し、クズの侵入パターンを変えた数値実験を行った。
耕作放棄後の優占種は、放棄1年目でオオイヌタデ・ブタクサ・メヒシバ、2年目でアレチマツヨイグサ・ブタクサ、3年目でアレチマツヨイグサ・ツルマメと変化したが、4-7年目はセイタカアワダチソウが、7年目以降はクズが安定して優占した。植物の出現種数は、放棄年数が増大するほど減少したが、放棄12年目以降は安定した。セイタカアワダチソウは、放棄1年目には出現しなかったが、放棄2年目に4個体の当年生実生が出現した。これ以降、年々被度が増大したが、放棄5年目をピークにその後減少した。
数値実験の結果、クズが遅れて優占する場合、クズが出現しない場合に比べて、セイタカアワダチソウの開花個体は1/7、非開花個体は1/2に低下した。また、クズが先に優占する場合、セイタカアワダチソウは増殖できないことが示唆された。