| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(口頭発表) H1-12 (Oral presentation)
Yamamura et al. (2012) は、世界の大都市における都会への人口の集中と田舎へのUターンのパターン、および、モンゴルにおけるウランバートル市域への人口集中を説明するための人口移動の数理モデルを構築した。その基本モデルでは、田舎の人口と田舎の自然資源量を変数とし、田舎と都会の2地点の価値の差に比例して、価値の低い地点から価値の高い地点へ一方的に移動が起きると仮定された。田舎の価値は自然資源の豊富さで決まり、それは人口が増えると減少するとされ、都会の価値は一定とされていた。今回のモデルでは、価値に依存しないランダム移動を加えること、都会の価値を都会の人口の関数として置き換えたることの2つの拡張を行った。
基本モデルでは、都会の価値が増加するにつれて、田舎のみに人が住む状態、田舎と都会の両方に住む状態、都会のみ人が住む状態が実現された。ランダム移動を考慮すると常に両方に人が住む状態となるが、人口分布のパターンは、基本モデルの結果を滑らかにしたものになった。また、総人口が増加するとき都会の人口のみが増加するという基本モデルの特徴も、滑らかになりはしたが維持された。
都会の価値が、人口が少ないときはその増加関数であり多くなると減少関数になるという密度依存関係を導入すると、移動の大きさを表す定数がある値以上という条件下では、田舎と都会の人口移動が周期的に繰り返されること(リミットサイクルの存在)が分かった。