| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) H2-13 (Oral presentation)

二枚貝から見た福島県沿岸における放射性ストロンチウムの分布

*苅部甚一,田中敦(国環研),栗島克明(WDB(株)),木方展治(農環研),柴田康行(国環研)

2011年3月の福島第一原子力発電所(原発)事故によって、放射性セシウムとともに放射性ストロンチウム(Sr-89、90)が、大気のみならず海洋にも直接放出された。しかし、その放射性ストロンチウムの環境中の存在量および挙動は不明である。そこで本研究では、環境中の物質を一定期間濃縮、保持する二枚貝から、福島県沿岸における放射性ストロンチウムの分布を明らかにすることを目的とした。

調査は2011年6~8月、2012年5月に茨城県~青森県の太平洋沿岸で行った。採取した二枚貝は軟体部を酸分解、海水は濃縮後にSr分離を行った。放射能はベータ線を低バックグラウンド2πガスフローカウンターで測定して算出した。

2011年の二枚貝Sr-90は、福島県広野町(原発から南に23km)で0.17±0.07Bq/kg、南相馬市(北29km)で0.038±0.009Bq/kg、茨城県大洗町(南128km)で0.012±0.004Bq/kg、青森県東通村(北445km)で0.017±0.004Bq/kgであり、同時に測定した放射性セシウムと同様に原発に近くかつ南側で高い傾向があった。2012年の福島県の二枚貝Sr-90は、原発南側で高いがどの地点も前年より減少していた。海水Sr-90は、2011年の福島県いわき市(南48km、0.021±0.002Bq/kg)と相馬市(北37km、0.026±0.001Bq/kg)で類似していた。二枚貝の見かけのSr-90濃縮率(二枚貝/海水)は、いわき市で2.9、相馬市で1.2となり、原発南側で高かった。以上の結果は、原発由来放射性ストロンチウムの生物への蓄積、及び原発北側よりも南側への拡散傾向が強かった可能性を示唆している。


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