| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) H2-22 (Oral presentation)

耕作放棄後の植生/リター/土壌の炭素増減パターン

下田星児*農研機構・北農研・芽室

一般に、耕作放棄地は、雑草枯死後の有機物が土壌へ供給されるため、炭素吸収源と仮定されることが多いが、IPCCのLULUCF分野のガイドラインでは、国際的なデータの不足から、耕作放棄に伴う炭素量変化を評価していない。発表者が、過去に行った継続の管理休耕地と放棄地の定点調査と多点調査では、西日本では耕作放棄後に土壌炭素量が減少する場所が多いことが分かっている。耕作放棄と作物(水稲)栽培継続時の土壌炭素量を比較するため、西日本29地点の水田に隣接する放棄地において土壌採取を行い、リター量などの計測を行った。放棄伴い土壌の仮比重は大きく変化するため、水田の仮比重を基準として、0-30cm層の土壌炭素量を評価した。

放棄後の炭素量は、大きく増加する地点もあったが、6割以上の場所で減少した。放棄年数が長期化すると増加する傾向にあり、放棄後20年以上の地点では、約8割の地点で炭素量は増加した。放棄後5年以下では、ほとんどの地点の土壌炭素量は減少しており、放棄後の植生の回復が緩慢な場合は、炭素供給が進まずに土壌炭素量の減少が大きくなることが示唆された。

土壌炭素量の鉛直分布を見ると、表層増加型・下層減少型が半数以上を占めた。0-5cm層は放棄後に増加しやすいが、10cm以下の層の土壌炭素量が増加する地点は2割程度しかなかった。放棄後の雑草の根量や地上部乾物重は放棄年数と関連せず、表層堆積リター量は放棄年数が長いほど多くなる傾向が見られた。0-5cm層の土壌炭素量の増加に、表層堆積リターが寄与している可能性がある。リター自体の炭素含有率は42%程度で、放棄年数に関わらずほぼ一定であった。また、人為的管理(草刈・耕起)を行った地点は、土壌炭素量の増減幅が小さかった。


日本生態学会