| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(口頭発表) H2-23 (Oral presentation)
<背景と目的>
土壌に供給された有機物は、主に微生物による分解(代謝)作用を受けると同時に、化学的吸着や物理的隔離といった土壌団粒や鉱物粒子との相互作用を繰り返す。これにより、サイズや化学的性質の異なる有機・無機集合体が形成されるため、土壌有機物の大半は1.8 g mL-1以上の中~高比重の土壌粒子(団粒)として蓄積すると推測されている。しかし、供給された有機物が中~高比重画分として蓄積する速度は明らかではない。比重分画法と安定同位体トレーサー法を組み合わせることで、比重の異なる土壌団粒への有機物の移行割合を定量評価することを目的とした。
<方法>
表層土壌(黒ぼく土)に13C標識グルコースを添加・培養し、低比重(<1.8 g mL-1)、中比重(1.8-2.5 g mL-1)、高比重(>2.5 g mL-1)画分に分画後、それぞれの画分の回収量、同位体比、全炭素濃度を測定した。
<結果と考察>
分画された土壌の炭素量は非晶質鉱物を主体とする中比重画分で85%と最も多く、植物リターを主体とする低比重画分で10%、高比重画分で5%と最も少なかった。一方、添加した13C-グルコースのうち、30日間でCO2に無機化された割合は49%であった。土壌に残留した13Cは低比重、中比重、高比重画分にそれぞれ、37%、13%、0.8%であった。短い培養期間では、低比重画分に存在する微生物バイオマスに多くの割合の13Cが残存したと考えられる。また、一次鉱物を主体とする高比重画分に比べ、中比重画分において13Cの濃度と回収率が高かったことから、黒ぼく土では、非晶質鉱物が有機物の蓄積に大きく寄与していることが示唆された。