| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(口頭発表) H2-24 (Oral presentation)
序論 生態系純生産(NEP)は、純生産量(Pn)と、土壌呼吸量(SR)中に含まれる従属栄養生物によるCO2放出量(HR)との差で定義される。しかしSR中から植物根の呼吸量(Rr)を分離し,HRのみを測定する方法はいまだ確立されていない。本研究ではコナラ二次林内においてHRの測定方法を考案し、NEPを精度よく推定することを目的とした。
方法 コナラ二次林内に中心区画50cm×50cm=250㎡を残して周囲に幅30cm,深さ40cmの溝を土壌に掘り、溝に防根透水シートを敷き詰めた上で植物根を取り除いた土壌を埋め戻すことで、植物根の除去エリアを作成した。これをHR-siteと呼んだ。HR-siteの内側と外側で、赤外線ガス分析計を用いて土壌表面からのCO2放出量を測定した。また、測定エリア周囲の樹木に関して、毎木調査とリターフォールの採集を行い、積み上げ法を用いてPnを推定した。
結果 2011年のコナラ二次林における年間総SR量は10.4tC・ha-1・yr-1、年間総HR量は6.0tC・ha-1・yr-1となった。この結果から、SR中のHRは約6割であるとわかった。毎木調査、リターフォール測定により算出したPnは6.4 tC・ha-1・yr-1であった。PnからHRを差し引いた結果、コナラ二次林におけるNEPは0.4 tC・ha-1・yr-1となり、プラスの値を示した。
考察 今回の研究でSR中に含まれるHRは全体の約6割である事が分かった。しかし植物根の除去を行った事で、土壌中の微生物に影響を及ぼしている可能性がある。また土壌中の植物根、微生物、有機物は密接に関係し合っている為、どの方法を用いても何らかの問題点が発生すると考えられる。正確にNEPを算出するには、複数の方法を用いて異なる条件下での測定を行い、その結果を照らし合わせていく必要がある。