| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) J1-01 (Oral presentation)

インドネシアの国立公園における野生生物保護と住民利用の両立を図る-ジャワ島での事例

*杉村乾(森林総研・企),Wim Nursal,Age Kridaraksana(国際林研セ・環),Dones Rinaldi(ボゴール農大・林)

ジャワ島西部に位置するグヌンハリムンサラク国立公園を調査対象地に設定し、固有種の保全と地域住民による持続的な森林利用との両立を図ることを目的とする研究を行った。同公園では、ジャワテナガザル、ジャワヒョウ、ジャワクマタカを指標種に選び、公園職員が観察した地点を記録しており、その記録をもとにデータベースを構築した。さらに、ジャワヒョウを対象にカメラを設置した。また、指標種と周辺住民の森林利用との関係を把握するために、GPSを併用した調査を行った。

指標種の観察地点と公園の境界線からの距離との関係を解析した結果、耕作放棄地、人工林、若齢二次林などの二次的自然が主である境界付近において、いずれの種も多く観察された。なかでもジャワクマタカの観察頻度が高かったのに対し、ジャワヒョウはより境界から離れた地点で頻度が高かった。一方、住民による森林利用の大半は公園または森林と農地の境界からほぼ500m以内において、家畜の飼料となる草本や燃料用の小枝などを採取する活動がほとんどであった。

インドネシアの国立公園はアメリカの制度を導入したため、当初から住民利用の排除を試みていた。いくつかの国立公園におけるゾーニングを確認したところ、一部の利用を認める方向へと法律が改定された2004年以降も、大半の区域で原生的自然を保護、または回復させることを基本としていることがわかった。しかし、3種の指標種を合わせると食性の幅かかなり広いことやそれらの生息状況を見る限り、必ずしも大半を原生的自然として保護する必要はないと考えられる。天然林を保護しつつ、地域住民の伝統的かつ小規模な利用を認める制度の方がインドネシアの地域事情により適合している可能性が示唆されたと言える。


日本生態学会