| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(口頭発表) J1-04 (Oral presentation)
琵琶湖周辺の湿地帯、「西の湖」で、コイ科等の在来魚とオオクチバス、ブルーギルなど外来魚の繁殖環境を調査したところ、水際が緩やかな傾斜の地域では在来魚仔稚魚が多く、水際が崖状に落ち込んだ地域では外来魚仔稚魚が多いことが分かった。
そこで、崖状の湖岸をなだらかな地形に修復すれば、在来魚の繁殖環境の改善につながるのでは?と考え、2011年3月、関係法令の許可を受けたうえで、「西の湖」の一部の湖岸で地形修復のための工事を実施した。実験地の幅13m、奥行23m、重機で表土をすきとることで、緩やかな傾斜を造成した。
工事前年の調査では、実験予定地・対照地では、ともにオオクチバス仔稚魚が優占し、コイ科仔稚魚はほとんど採集されなかった。しかし工事実施後、実験地では、2011年4月下旬にコイ科と思われる成魚が目視確認され、5月上旬には、コイ科魚類の卵が1回の調査で390個、中旬にはコイ科仔稚魚が25個体採集され、下旬にはタナゴ科稚魚が3尾採集された。一方、対照地では、コイ科魚類の産着卵がわずかに確認されたものの、仔稚魚はほとんど採集されなかった。
翌年も同様の調査を行うとともに、実験地、対照地ともに人工産卵床(キンラン)を設置し、産卵床設置の影響についても検証を行った。
2012年は実験地・対照地とも、オオクチバスとブルーギル仔稚魚が前年より多く採集されたが、実験地のコイ科仔稚魚数は前年とよく似た傾向を示した。また実験地・対照地とも、同一地点ではキンラン上で多くのコイ科の卵・仔稚魚が採集された一方、外来魚仔稚魚はほとんど採集されなかった。これらの結果から、水際の形状を修復することに加え、修復地域に人口産卵基質を設置するなどの手段を併用することで、在来魚の繁殖環境をさらに改善できると考えられた。